「私の髪は長いもの」と、いわゆる「恐怖のナポリタン」について考えてみる 幕間:紅茶のおいしい失恋レストラン
と、ナポリタンについて推理する前に、「ナポリタン」と「私の髪は長いもの」を悪魔合体させてみることにした。
ある日、私は森に迷ってしまった
夜になりお腹も減ってきた
そんな中、一軒のお店を見つけた
「ここはとある紅茶のおいしいレストラン」
変な名前の店だ
私は(紅茶がおいしい、という店名にもかかわらず)人気メニューの「ナポリタン」を注文する。
数分後、ナポリタンがくる。私は食べ…ようとすると、突如として少女が駆け込んできた。
少女が言った。「大変、みんな寝たままなの」
そりゃそうだ。今はもう夜だ…と思って外に出てみたら、もう明るい
ナポリタンが出来るのを待っている間に朝、いや、昼になっていたようだ
数分待っていただけだと思ったんだが…
確かに周囲の民家を調べてみると、村人全員まだ昼間だというのに寝ていた
老若男女村人全員が寝ているのだ。
気がつくとレストランの店員も料理人も寝ていた。まあ夜を徹してナポリタンを作っていれば寝入ってしまうのも納得できるが、それ以外の村人も寝ているのは妙だ
が、なによりも腹が減って死にそうなので、ナポリタンを頂く
……なんか変だ。しょっぱい。変にしょっぱい。頭が痛い。目頭が熱い
私は涙にむせながら苦情を言…おうとしたが、私と少女以外はみんな寝ているんだった
私はナポリタンをひとまず食い尽くそうと思ったが、ダメだ。リタイヤ。この味には耐えられない。今まで食ったナポリタンの中で一番まずい。夜を徹して作った結果がこれか。
やり場のない怒りに震えていると、少女が話しかけてきた
少女:「じゃあ私が作りましょか。ナポリタンだけは自信あるんで。御代も結構です。」
店員でもないのにお代を取るつもりだったのか、少女よ
でもとりあえず作ってもらうことにした
数十秒後、ナポリタンがくる。やけに早いじゃないか
私は食べる。今度は平気みたいだ。むしろ世界一うまいナポリタンに思えてきた。
腹が減っていた自分は夢中になって食べていたが、どうしたことかナポリタンはずっと減ることなく皿にあり続ける。食っても食っても減らない不思議なナポリタン
不思議に思った私は少女に尋ねた。なぜか少女は自分に対して背を向けたままだった
「何でスパゲティが減らないんだ? そしてなぜお嬢ちゃんは起きているの?」
少女は答えた
「だって私の髪はナポリタンだもの」
彼女の長い髪が途中からナポリタン色になって、皿の上に伸びていた
そして振り返った少女の顔を見て私は気づいてしまった…
なるほど、そういうことだったのか…
ここは失恋レストラン…
白いお皿に…グッバイ…バイ…バイ…
*正解編*
そんなばつの悪い夢にうなされて、自分は夜中に目を覚ました
そう、それは十数年前。私は紅茶とスパゲティがおいしいと評判のレストランに、当時の彼女を連れて行った。髪の長い彼女だった。
意気揚々と大盛りのナポリタンをがっつく自分に、彼女は紅茶のカップを置いて静かに話しかけ始めた。
別れ話だ。あまりに唐突すぎて、自分はナポリタンをのどに詰まらせそうになった。
「これからも、いい友達でいましょうね」
それ以来、私は大好物だったナポリタンを食べなくなった。そういや彼女にもうちでよくナポリタン作ってもらったっけか。初めて食べた彼女の手料理もナポリタンだったはずだ
…そんなこともあって、ナポリタンを見るだけで涙さえ出てくるようになった
あのしょっぱいナポリタンは、涙の味のナポリタンだ
あぁ、自分がおいしいナポリタンを食べられるようになるのはいつのことやら
忘れたくても忘れられない。未だに悪夢として出るなんて
にしても、なんで村人がみんな寝てたんだ?
まあいいや、夢だから