というわけでいきなり今日のことでなく昨日のことなのだが

昨日札幌で初雪が降った。
平年より八日ほど遅いそうなのだがいつも雪が降る時は「ゲッもう降り始めた!」という気持ちにしかならないのが「雪に対してそれほどロマンチックな幻想を抱けない(というか抱けというほうがムリなほど悩まされる)」北海道人の悲しい性。

でも、正直昨日の初雪は今まで遭遇した初雪の中で一番素敵だった。
何となく「札幌で初雪」というと「自分が予想してない時に遭遇して困る」とか「雪というよりは『あられ』」な場合が多いけれど、今年のはちょっと違った。

初雪に遭遇したのは朝。だいたい三日に一回くらいの割合で訪れる「汽車に間に合うギリギリの時間で部屋を出て信号二つ分くらい走るハメになる」日だったんだけれど、二つめの信号に到達したあたりで、立ち止まった自分の足下に白いものがちらほら。
ふと見上げると、空は快晴なのに、どこからともなく雪がちらちらと降ってきていた。
北海道でも(というか北海道では)、雪が降るのは曇天の時だ。晴天に舞う雪なんてのはたまにしか見られない。
そのとき思い出したのが、自分がまだ予備校生のころのことだった。
予備校生といっても予備校はサボりがちで、時々街までいってぶらぶらしたり、鬱屈した気分を抱えたまま自宅の周りを散歩する日々を続けていた。
その日も、受験直前かそのくらいの時期なのにろくに勉強に身も入らず、いかんともしがたい気分のままコートを着込んで散歩に出かけた。たしか持ってったMDには当時よく訊いてた中村一義のアルバムが入ってたと思う。
ああでもないこうでもないと受験とは関係のない考えを頭の中でこねくり回しながら、うつむき加減で歩いている時だった。
不意に顔を上げると、晴天の冬空の中、陽の光に照らされた雪がぶわっと降ってきていた。紙吹雪みたいだ、というと貧相な感じだけれど、多分人が祝福されるときの紙吹雪ってこんな風に美しく見えるんだろうな、という感じの、えらく晴れ晴れしい光景だった。
生きててよかった、とか、祝福されたような気持ちだった、とまでは感じなかったけれど、少なくとも「何とか、あるいは何となく救われた」ような気分になって、部屋に戻ったのを覚えてる。
仲のいい友達が一人できたこと以外あまり思い出したくないことが多い(というよりは、思い出すようなイベント自体があまりなかった)予備校生時代の、数少ない「美しい」記憶である。


調べてみたら、こういうのは「風花」というっぽい。
ちなみにWikipediaでは

風花(かざはな、かざばな)は、晴天時に雪が風に舞うようにちらちらと降ること。あるいは山などに降り積もった雪が風によって飛ばされ、小雪がちらつく現象のこと。からっ風で有名な群馬県でよく見られる。

冬型の気圧配置が強まり、大陸から日本列島に寒気が押し寄せてくると日本海側で雪が降るが、その雪雲の一部が日本列島の中央にある山脈を越え、太平洋側に流れ込んできたときに風花が見られる。

と記述されている。まあこれそのものかどうかは分からないけれど、ほぼ同じものなんじゃないかと。